映画『女王陛下のお気に入り』
映画『女王陛下のお気に入り』
監督：ヨルゴス・ランティモス
出演：オリヴィア・コールマン/
エマ・ストーン/レイチェル・ワイズ/
ニコラス・ホルト/ジョー・アルウィン/ジェームズ・スミス/マーク・ゲイティモスジェニー・レインスフォード
アカデミー賞の前に、そして予告編が出た時からずっと観たかったやつ。
ドロドロ、と言ってしまえば簡潔だけど、
そうとも言えない変わったの演出、
綺麗だけではない衣装たち、
彼女らの表情、
その隅々まで見ててピックアップする監督。
美しい百合ものと思ったら大間違い。
ここには、理想や妄想の女性像はどこにも描かれない。
美味しそうなケーキを頬張ったところで、
それは口からゲロになる始末。
最&高である。笑）
突飛なCGも派手な流れもない、
表情がアップになるか、ドン引きの広角レンズで一気に視覚的な情報を出してくるかの画たち。
でも、だからこそ、これもこれもと中途半端に欲張った情報は入れず、
見えていない部分での音の効果で、目で伝わることと耳で受け取ることで
身体中が感化される時間。
これはDVDではとてもじゃないけど拾えないこと。
映画館で観てよかったと、まさかこの作品で思うとは。
受け身側のリアクションも逃さずに捉える。
舞台なら、隅っこにいても全てが観客の目に入る。中心の視界に入らずとも）
しかし映画だと、どうしてもその時切り取られる人物が中心。
その脇で、今、中心にいる人が放った言葉に
どんな顔して受け止めたのか、見せてもらえないこともある。
でもこの女優陣、表情ひとつ、まゆげひとつで
伝えられてしまう方々ばかり。
アップにするのも分かるわぁぁ。
アン女王の“お気に入り”になるべく、
自分が生き残るために策を重ねる女たち。
エスカレートしてゆく行動の狂気を感じつつ、
どうにもファニーな瞬間があって、
ゲラゲラ笑ったシーンもあった。
1番覚えててツボだったのは、
今後の対策を真剣に独り言で考えるアビゲイルの横で
新婚ホヤホヤ、初夜にウキウキな旦那。
仕方ねぇなと、
男のナニを手でナニしてやってる瞬間。爆）
絶妙なアングルで見えないけど、
なんてなんて男を滑稽に仕立てるのか。
というかね、
女性って、同時進行で物事考えたり行動することが得意らしくて。
どんなに溺れそうなセックスの最中でも
真剣な別れ話の時でも、
あ、雨だ、洗濯物干しっぱなしだ、
なんて平気でよぎらせてしまう、
ことがある、よね。←
逆にめっちゃのめり込める面も両極端であるけど。
そんな事にも気付かず昇天してしまう男。
その後に拭く手も、なんて雑なんだと。笑）
こうした所作がなんとも女性的で。ゲラゲラ。
そうなんですよねー、なんて。笑）
そして話がどんどん黒くなってゆく最中、
真逆をいったアビゲイルの衣装が素敵で。
変化してるのは気づいたけど、
最後に白くなってゆくのは
「白という色がよごれやすく、より手がかかる分お金持ちではないと着られないだろから」
という考えから、らしい。
今回衣装を担当したサンディ・パウエルは『メリー・ポピンズ リターンズ』の衣装も担当。
あの絶妙なアニメーション具合を残した衣装がとても私は好きで。
同じ人物と知って、私はサンディ・パウエルさんのデザインが、
というか、
作品に参加させる衣装たち、という意思が、好きなのかもしれないなと。
んんん、たまらんお仕事っぷりに酔うわー。
絡みまくってこんがらがった自分たち女の関係を
子供のおままごとのように楽しむ女王。
主演女優賞、
というには主演感はあまりなく。
3人がメインに見えたから。
受賞の時にはちょっと意外だったけど、
顔の筋肉半分だけ使う表現力や、最後の圧。
圧巻だったなと、思い返してまた汗かきそうになる。
露悪的で意地が悪くて、
品があって下品な面があって。
こんな女性たち、どうですか。
可愛げも健気さも、儚さもいじらしさも
どこにもない。
勇ましく貪欲で、暴力的な言葉を銃と共にぶっ放し
ゲロを吐きまくる、宮廷の女たち。
爽快か、胸くそ悪くなるかでいいんだと思う。笑）
ドロドロ、の表皮が何枚も何枚もある今作。
決して泣けもしないし気持ちよくもならないです。
それが私はとても好き。
はー、意地が悪いわ。好）
パンフレット買って良かったな。
1コメント
2019.03.04 20:49