映画『ちいさな独裁者』 #eigamote

映画『ちいさな独裁者』(ドイツ・2018年、日本・2019年)
原題:『Der Hauptmann』

監督:ロヴェルト・シュベンケ
出演:マックス・フーバッヒャー/
フレデリック・ラウ/ミラン・ペシェル/アレクサンダー・フェーリング
/ワルデマー・コブス/ザムエル・フィンツィ/
ブリッタ・ハンメルシュタイン



予告編からなんやなんやと気になってたひとつ。
僕モテお題映画。

とある脱走兵が、大尉の制服をひょんなことから手に入れ、
制服の力に任せて権力を掴みのし上がってゆく。

とんでもなく驚いたのが、
これが実話だってこと。
本人は若干21歳で最後、処刑されてる。
ということは、権力のままに手を下したことをした時は
その歳以下だったとも。。

映像に、ずっと血が通わないような冷たい色。
だからこそ、題名、そしてエンドロールの文字の色、
朱色に近い赤い文字が、映えること映えること。

最近、映画や舞台、作品内での“赤”が気になる。
『未来を乗り換えた男』での赤い衣装からだけど。
とんでもない力と意味を込められるパンチの強すぎる色。
使い所を間違えれば、ものすごくズレることもあり得るだろうな、なんて。

『未来を乗り換えた男』
『赤い橋の下のぬるい水』
『サスペリア』
『十二人の死にたい子供たち』
『ちいさな独裁者』

赤に、ぞくりとくる。


『ちいさな独裁者』は、エンドロールこそ見逃しちゃいけなかった…!
よ!

最後まで黒い画面に文字、
のいつものエンドロールは出てこないから、飽きずに辞めずに、
最後まで席にいてこそ完成。



笑えない、笑えない喜劇なんだと思う。
たかだか制服。
ただの服。

でもその身に纏うもの1つで、人々の信頼を得て、
人を大量に虐殺し、
おだててもらって自分がトップの組織が出来上がり
のし上がれてしまう。

日常も、そうだよなと。
だっさくて気の抜けた服を着ていれば
バカにされやすいし見下されやすい。
でもブランドものだったり、
露出があったり少しでも流行りのものを着ていたら。

仕事だって警察官の制服を着ていれば警察だし、
スーツを着こなしていればどこかキチンとした人だと思われる。

見た目だけでその人の情報を決めてしまう人間よ。
その人の持つ権力というものは、服で持ててしまうのかと
人と、人間が生きてる環境の滑稽さったら。

見た目で判断するな、とも思わないけど。
だってここでの制服だって仕事着だって、
資格がないと本来は着られないのだから。

服が恐ろしいのでもなく、
本当に恐いのは、周りの人々。
その服を纏ってる人を判断し崇高し、
権力者に仕立て上げてしまったのは
なんの凄い人でもない人々。(中には上官もいたけど。)
周りの人が権力を与えてしまうのかと
自分たちの一般市民のことを言われてるようでゾッとした。。
服じゃなくても、学歴や経歴で判断するものね。
未熟な人に権力を与えてしまうと、、
あぁ、恐ろしいわな。


エンドロール、
最初は流れのままの、栄光の時間の最中だと思ってた。
でも歩く市民はどこか今までと違くて。
現代を象徴する物が登場した瞬間、
“現代にこの人たちが来たら?”
とも思った。

けど、それも違う。

これだけ“服”を軸にしてきたことを振り返れば、
服が違うだけで、、今も同じことをしている
そう言われてるよう感じたり。


ドイツと日本では政治的なことは当然違うと思うけど
どうにも自国のことがよぎってしまい、
口があんぐりだった。。

あのエンドロールを観ずに帰った人たちは
どんな感想を抱いて劇場を後にしたんだろ。
最後まで観た私とは、違った感覚だろうな。


色のない作風は昔話のようにも体感してしまうけど
全くもって、現代に向けた“風刺”映画でした。


このセンスよ。。
題名にナチスもヒットラーも入れないのもまた凄いなと
帰り道に思ったり。

出てきたおっぱいが見事すぎて
ノーブラでも谷間ができる説が浮上してしまった…←
や、でもやっぱり綺麗な谷間を作るには
何かが必要だって!←


浮かれてるシーンのスローモーションが
まるで絵画みたいだな、
と思った私だったけど。
結果的に、風刺画ならぬものでした。
余計な寄り道もなくストーリーも真っ直ぐで
この骨太さ。

うーわあ、凄かった。

【次回】

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1コメント

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  • 神田久好

    2019.02.16 21:40

    おはよう! 梨紗ちゃん、この映画のストーリーを見て、 中学生の頃に読んだ短編小説で菊池寛の「形」を思い出しましたヨ~!  人間の先入観って、ホント不思議ですよネ~ 今日も色々と頑張って下さい!