映画『グッド・ワイフ』

映画『グッド・ワイフ』

監督:アレハンドラ・マルケス・アベヤ
出演:イルセ・サラス
カサンドラ・シアンゲロッティ
パウリーナ・ガイタン
ホアンナ・ムリージョ
フラビオ・メディナ


久々のYEBISU GARDEN CINEMA。
最近はいつも行くと久々だから、いつもなんかエモくなる。私情)

メキシコの映画。なかなかお目にかかれなくって??
時代は80年代。
『ROMA』から10年後の、メキシコ。
そこはまるで、バブル崩壊のお城でした。
肩パットと、皮肉がたっぷりで、この映画館らしさにワクワク。

お金持ちの奥様はお金持ちの奥様達とつるむ。
お話し会になるたびの、マウンティング試合は壮絶。
しかし、露骨のようで露骨じゃなく
露骨。どっち)
そういう表現を多く感じた。

でも普段生きてて、露骨に好きも嫌いも嫌味も皮肉も出さないものね。
マウンティング最中はカメラワークも面白い。
ぐるりぐるりと観客を惑わすし、うっかり話しについていけない瞬間もある。
会話劇についていけねぇよ…思うけど、心配する必要はない。
口をつぐんで、その会話を見るしかない人物に必ずフォーカスがあたっている。
というか、その人を中心にぐるぐるしてるいる。
まるで観客の私たちのように、おどおどし、その場に置かれている苦痛が共有できるから。


転がる転落を、静か、と捉えるか、抑制されてると取るかで印象はだいぶ違うだろうな、と。

カードが使えなくなったり小切手も拒否されたり、お金持ちの日常が崩れてゆくコマンドはいくつか出てくる。
ことによって状況に気付けるが、決して誇張しないし広げない。
セリフや激情の説明に頼らないのが、今作。

また、ふいに出てくる象徴がスタイリッシュ。
黒い娥。肌の荒れ。ラジコン。
状況をこれらから得て、私たちは想像し、意味を理解してゆく。

映像と経済に関して細かく置いていってるからこそ、赤いドレスが、煌びやかでいたいプライドがズタズタに傷ついてくる。。

綺麗にしていなければ、という機会に。
そう、キチンとする場、またはそこに、プライドをかけて君臨しなければらない場に限って、何もかも上手くいかない時。
あの苛立ち。あの惨めさ。
ツラツラ眺めていたら、私たちは気付かない内に傷つけられていたらしく、とてつもなく胸にきた。
キッツかったぁー。


しかしラストの開き直り。
あの態度は彼女の中で新たなプライドの保ち方が存在してた。
目の前の犬だって、噛みつきたいのに目を逸らすしかないオーラをまとう。

吠える彼女に目を向ける旦那。
驚愕ともドン引きとも攻撃的とも冷ややかとも取れる目(恐怖)が、脳内にこびりつく。
それでも吠える彼女は、やはり女王であり、強いのか。



シーンが切り替わる前から、次のシーンへの声がすげー入り込んでくるから、ちょっと混乱した時もあった。
いやどこの誰の声?っていう。笑)

突然ちょっと前に戻ったりぐちゃぐちゃにしたカットの繋ぎには振り回されつつも、彼女の心情の表現としてはなんてセンス!
最初のシーンで、全てを持っている説明も叶っている。
ビビるほどに。

お金は、あるに超したことないのよ。
子供が「うちって貧乏なの?」の疑問は、持たなくていいのに。
私は人に言われたわけじゃないけどそう親に聞いたこともある。
いやうちの場合は両親が自ら言ってたんだけど。笑)

だからと言って、豪邸は映画の中だけでいいし。
誕生日のパーティとか興味ないし。
海外のドレスにも。
ただ、割引きの時には映画館で映画を観たい。
尊敬する人の公演があれば劇場に行きたい。
帰宅したら缶チューハイくらい飲みたい。
人とたまには外で飲みたい、家じゃ作れないメニューを食べてみたい。
これらって、小さくとも趣味娯楽であり、命に関わることじゃないから削ったっていいモノ。
でも、それぐらいの贅沢は続けたいよなぁ、ちっちゃい贅沢。
誰でもお姫様を夢見…ない。←
そこまではいらない。(小さい頃はなりたかったけど笑)
そんなことを、ポツポツ思いながら観てた。余談)


主人公の彼女の目線、彼女について軸をぶらさなかったからこそ観れたんだ。
しかし、可哀想とも描かない距離感が、また良いの。
玉の輿に乗って旦那の稼ぎによって成り上がる女。
今、映画でも世界でも声を挙げている男女平等とはまるで違う住人であり、温度差がある。

ー男尊女卑とか男女平等が遠のいたのは、彼女たちがいたからだー

そんな皮肉をものっすごく感じられた時には、少しニヤてしまった。
女性監督、やってんなぁ。

80年代の衣装も素敵だった。
肩パットは強烈。
皮のテニスバッグ、可愛かったなぁ。


【次回】

6月公演『初演版 -阿呆船-』作:寺山修司

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1コメント

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  • かんすけちゃん

    2020.07.16 21:08

    おはよう! 梨紗ちゃん、映画のチェックありがとう!  私の子供の頃は誰もが貧乏で・・・  でも、それが普通の生活だって感じていたから、全然不自由でなく~笑  姉のお下がりの穴の開いた赤いセーターを着てても誰も何も言わない!  ホント、ある意味幸せな時を過ごした感じがします~  お金があるから幸せとは、ヤッパリちょっと違う気がしますよネ~~  今日も色々と頑張りましょう!